桐たんすに込められた想いを大切に

北欧テイストリビングボードとチェスト

 北欧ビンテージテイストのリビングボードとチェストに再生しました。

 元の箪笥は三方桐の三つ重ねの箪笥で、日本三大桐箪笥の産地の一つである静岡県藤枝で作られたものだそうです。お客様のお母様の嫁入り道具で、おおよそ50年前に作られたものです。今回、ご自宅を建て替える際に想い入れのある桐箪笥も綺麗にして新居に置きたいということでご依頼をいただきました。

 当社の北欧ビンテージテイストを気に入っていただいて、そのテイストでインテリアにあうリビングボードを一つと、別の部屋に小型テレビも置けるチェストをというご希望でした。箪笥を拝見すると、中台と下台がほとんど同じ高さだったので、それぞれ二つのチェストにして並べるのではなくて、二つを並列に接合して幅広の一つのリビングボードにアレンジするご提案をしました。

 再生を開始すると二点の大きな驚きがありました。一つは50年ほども経っているのに材がほとんど痩せてなく、本体の直角や平面・直線が出ていること。二つ目は中台と下台の高さ寸法の誤差が0.5ミリ以下でほとんど同じだったことです。どちらも経年した桐箪笥には考えにくいことで、材が痩せて狂いが激しかったり、寸法も場所により様々なのが大概です。材料の管理も含め、よほど当時の藤枝の職人が優秀で技術が高かったことが伺い知れます。このことが幸いしてドッキング作業は無事成功いたしました。三方桐だったことも功を奏して、接合部分が桐ではなく杉だったことでよりしっかり接合させられました。

 塗装はインテリアに合わせて白。元の色より薄い色にしなければならないので桐箪笥ならではの塗装技法の浮造り(うづくり:萱などを束ねた硬いブラシで強く擦ることで木目の凹凸を出す加工)を施し、木目が残るようにしました。

 新居に設置するとインテリアにあっていてお客様も満足されていました。今回も挑戦だらけの再生となりとても勉強になりました。たくさんの気づきも含め貴重な機会を与えてくださったお客様に感謝いたします。ありがとうございました。
 
【寸法】リビングボード W:1730 H:850 D:435(mm)
    チェスト W:892 H:800 D:415(mm)
【塗装】ステイン着色、オイルワックス仕上げ