元々はおそらく金庫の中の内張りとして使用されていた桐箪笥ではないかと思われます。(お客様も把握していない)
本体がぐるっと四面とも奥から正面側に向かって斜めに広がっているのです。これはおそらく外枠があり、その内側にピッタリと仕込むためにこのような造りをしたのだろうと考えられるからです。そして内張りに桐を使うのだから金庫であろうと推測しました。側板には棚板等を止めるための金釘が打ってあり、その印もそのままで見える場所のように仕上げていない点からも内箪笥であっただろうと思われます。
先祖代々伝わって在った箪笥だそうです。ご自宅のリフォームに併せて箪笥も再生して欲しいというご依頼でした。
再生は単純な修理と違い、元の箪笥のストーリーを大事にしたいのでその独特な形状を生かして仕上げます。何度か修復された跡もあり、扉のハンドルは引き出しのそれとは異なった雰囲気の物が取り付けられていたのでなるべく似た雰囲気の物を探して取り付けました。そして、無くなっていた扉の召し合わせも新調し、その形状は金具たちに合うように気を遣いました。
脚のバランスは難しかったですが、かわいらしい形にまとまったと思います。
綺麗になった箪笥の姿にお客様はとても驚き、満足しているようでうれしかったです。いつも再生の現場でしか学べない機会を頂けるお客様には感謝しきりです。ありがとうございました。
【寸法】
W:618 H:1024 D:445 ㎜
【塗装】
オイルステイン、オイルフィニッシュ