桐たんすに込められた想いを大切に

北欧テイスト焼杢仕上げ

 北欧ビンテージテイストのチェストを焼杢仕上げしました。

 箪笥の持ち主はお客様の亡くなられたお母様のもの。ご実家に使われず眠っていたのですが、お客様宅の新築に伴いアレンジしてほしいというご依頼でした。

 材は薄いものの総桐で、当時そのご両親は頑張って誂えたのだろうと伺える箪笥でした。状態は綺麗で大きなキズや虫食いなどはなく、大事に使われていたと察します。

 新築のお客様宅はモノクロのシンプルモダンなインテリアということで、アレンジしたチェストもグレー系で塗装してほしいということでした。濃い色で着色すると木目が見えなくなってしまって無垢の質感を感じられなくなってしまうと思い、焼杢仕上をご提案させていただきました。

 焼杢仕上は伝統的な桐たんすでもある伝統的な塗装法です。バーナーで焼いて磨くと柔らかい木目がよく焼けて木目に沿った凹凸が現れます。厳密には伝統的な焼き杢仕上は焼いた後その煤と“との粉(粒子の細かい土)”を混ぜたものを塗ってさらに木目を際立たせるのですが、その後ロウ引きといって艶出しのためのロウを擦り付けるだけで、耐水性は無く、手垢や水縞が付きやすいのが欠点です。当社では形だけでは無く、より普段使いしていただくために“との粉”仕上げはせず、焼いた後に白めのグレーのステインを塗り、オイルワックスで仕上げます。そうすることで無垢の質感や焼杢仕上げの質感を損なうこと無く耐水性や耐久性を与えることができます。

 完成した新築のご自宅に設置すると、狙い通り。モノクロの色味に調和したのはもちろんですが、無機質なシンプルな空間に控えめながらも木の質感がアクセントになり和らいだように感じます。お客様もこんなに変わるのかと驚き、ご満足していただけました。私も新しい質感のアレンジが出来て大変勉強になりました。ありがとうございました。
 
【寸法】一台分 W:922 H:800 D:415(mm)
【塗装】焼杢、オイルワックス仕上げ