桐たんすに込められた想いを大切に

総桐本箱の復元

 総桐の本箱の復元です。代々受け継がれてきたモノで、蔵に長い間しまってあったそうです。中にはこれまた歴史のある古書が入っていたそうです。お客様は、その他にも受け継がれてきた様々なものを大切になさっていて、徐々に再生させているとのことでした。そして、今回様々な縁あって酒井指物がこの本箱の再生をまかることとなりました。

 本箱の仕様としては、けんどん扉(本体内側上下の溝に、扉を上げて下げて固定される扉のこと)で棚が三段、内引出し一つ、外引出し一つ。状態は、はぎ割れ、虫食い、欠け、腐食多数。今回はオーバーホールしての再生としました。そして、より使いやすく、補強の意味もある、台輪を取り付けました。

 全体的に古道具らしい華奢な材料の厚さだったので、既成の木釘が打てず、新たに極細の木釘を作るところから始めました。今ある木釘は専門に作る業者さんがいて円錐型なのですが、昔は自作が当たり前で、四角錐型でした。実はこの四角の方が良く効くのです。文字で説明するのは大変なので、興味のある方は直接お問い合わせください。

 とにかく、オーバーホールに木釘づくりと、再生の手間としては大変なものがありましたが、完全に一から再生するという、非常にやり甲斐のある楽しい作業でした。いつものことですが、再生が完了した品物を俯瞰で眺めたとき、おぉ~と自分でその変貌ぶりに感嘆します。それが今回はより一層大きかったと思います。お客様にも喜んでいただいたようで、一安心しました。ありがとうございました。
 
【寸法】W:400 H:580 D:230(mm)
【塗装】オイルステイン着色、オイルワックス仕上げ