桐たんすに込められた想いを大切に

北欧調テレビボードとベットサイドテーブル

 総桐三つ重ねから、北欧調テレビボードとベッドサイドテーブルに再生しました。

 元の箪笥はおよそ70年前に誂えられた亡くなられたお母様の嫁入り道具でした。戦後間もない頃で苦労して誂えたと聞かされていたそうです。住居を改築されるのに合わせて形見の箪笥も再生したいというご依頼でした。

 北欧ビンテージ風のテレビ台がご希望ということで、打ち合わせをする中でお客様から新しいアイディアをいただきました。最近、弊社では横長に合体するアレンジが増えています。しかしこれまでは同じ高さにして一体とするのが当然だと思っていた中で、高さの違う物を合体させて、段差の部分をデッキスペースとしてまとめられないかと。はじめは戸惑いましたが、お客様のご希望を実現するのが職人の腕の見せ所。その場ではベストな工法は思いつかなかったのですが不可能はないだろうと、ご注文をお受けすることにしました。悩むこと数ヶ月、これならいけるだろうと考えが固まりました。されど古箪笥を想像通りの形にするにはかなり苦戦を強います。ある程度形になってくるまで緊張が途絶えませんでした。

 細かい説明は伝えきれないので、写真を見てください。とにかく今回は削り込みました。中心部になる上台の側面の平面・直角を出すことに。そこが基準となって両サイドが合体されるので一番気を使いました。そして、進めていく中で細かい部分の意匠にも気を使いました。

 完成品を見たお客様からは、想像以上の出来に満足と言っていただきました。細かい部分の意匠も気に入っていただけました。今回いつも以上に、そして見積もり以上に手間がかかった再生となりましたが、いつにも増して手放すのが惜しい作品となりました。自分自身どんどん再生の難易度と完成度が上がっているようで、今後の再生も楽しみになりました。
 何よりも、想像を超えたアイディアを提供し、挑戦する機会をくださるお客様には感謝しか有りません。今後も酒井指物の再生にご期待ください。ありがとうございました。
 
【寸法】 テレビボード W:1810 H:700 D:465(mm)
    ベットサイドテーブル W:400 H:500 D:360
【塗装】オイルステイン着色、オイルワックス仕上げ