桐たんすに込められた想いを大切に

嫁入り道具を厨子に再生

 およそ30年前にお客様のお母様の嫁入り道具として作られた和洋折衷箪笥を、新居移転に合わせて厨子に再生しました。

 新居移転に際し、嫁入り道具を処分するしないで母娘でかなりもめたそうです。思い入れもあるし、高価なものなので当然です。そして話し合いの末、当社を知り、新居に必要な厨子に再生しようとなったそうです。

 今必要なものに再生する。とてもシンプルな発想からでしたが、今回の再生は非常に興味深いと思いました。

 嫁入り道具が厨子(小さいお仏壇)に生まれ変わるということ。それは生と死のような、始まりと終わりを感じました。この箪笥と共にこれからの生涯を過ごすお母様は何を思うのか。察するにはあまりある事象ですが、とにかくお母様には喜んでいただけたようで、それだけで職人冥利に尽きました。貴重な経験をありがとうございました。

 また、桐箪笥はもともと再生の文化のある家具ですが、これは無垢ではないフラッシュ家具なので、大半の桐箪笥メーカーは再生を断ることがほとんどだと思います。確かにやれる範囲は限られるかもしれませんが、再生不可能ではありません。酒井指物はこれからもお客様の想いを形にするべくあらゆる努力をしていきたいと思います。

【寸法】W:560 H:689 D:450 [mm]
【塗装】ウレタン塗装