桐たんすに込められた想いを大切に

形見の裁ち板机

 裁ち板を机に再生しました。

 お客様は「三つ重ねを大改造」と同じ方で、桐たんすはお父様の形見の箪笥でしたが、この裁ち板はお母様の形見だそうです。お母様は和裁をされていました。お客様も幼少期にこの裁ち板でお仕事をするお母様に並んで宿題をしたり本を読んだりと想い出が詰まった裁ち板だったそうです。

 恥ずかしながら私の妻も和裁士で、この裁ち板の無数の跡を見るなり良い仕事してたんだねと言いました。決まった位置に同じ跡が付くということは正確な仕事ぶりが伺えるからだそうです。そのことをお客様にも伝えると嬉しそうに目を細めていました。極力この跡を消さないように丁寧に仕上げました。

 納めた後日、お客様からお礼のメールを頂きました。「年度末の仕事に追われていますが、母の仕事の跡を見ながら気持ちを整えています。」と。これを聞いた私は、お客様とお母様の想いが繋がった瞬間を感じました。貴重で素敵な機会をいただけて本当に感謝いたします。ありがとうございました。
 
【寸法】 W:1820 H:390 D:420(mm)
【塗装】オイルステイン着色、オイルワックス仕上げ