桐たんすに込められた想いを大切に

北欧ビンテージ調チェストとTVボードに再生

北欧ビンテージ調チェスト

TVボード

 三つ重ねの整理箪笥が北欧ビンテージ調のチェストが二竿と、TVボードに生まれ変わりました。

 元の箪笥はお客様のお母様の婚礼箪笥でした。ご実家は静岡県の山奥で製材業を営んでいたので、婚礼の際にはその土地の檜(ヒノキ)を自身で製材し使って箪笥をあつらえたのだそうです。

 昨年にお母様は他界してしまい、形見として残したいという想いでご依頼をいただきました。

 箪笥の状態は悪く、接ぎに続飯(ご飯粒を練って作った糊)を使われていたであろう為にほとんどすべての接ぎ部分が虫に喰われていました。檜の柔らかい部分や桐の部分まで喰われて穴だらけでした。
 檜で組まれた本体の表面に桐が貼られているのですが、表面は貼り替えれば済むのですが、板組の継手の部分まで多く喰われているのが厄介でした。
 完全にバラして虫喰いの部分が無くなるようにサイズを小さくして組み直す事も考えましたが、それでは新品を作るよりも手間と費用が掛るし、面影が変わってしまう。通常であれば虫喰いは除去して埋め木をするのですが、継手の周辺全てなので都度除去して埋め木をするとほとんどが埋め木になってしまい継手の強度が保てないのと、見た目がツギハギだらけになって美しくないと思いました。なんとかその状態で構造を補強できる方法がないかと考えました。

 しかし虫喰いだらけの割に檜で組まれた継手部分は朽ちてはおらず、硬度を保っているのが救いでした。桐であれば朽ちてふかふかになってしまっているのに、檜はそうはならないようです。
 その甲斐あり試行錯誤に時間がかかりましたが、一つ打開策を見出しました。虫喰いの空間全てに接着剤を充填させるという事です。虫穴より細い注射器で中から充填しなければならないので、接着剤の程よい固さの調整や、乾燥後に硬化し強度が出るものの選定や、最終的に塗装に馴染み目立たなくなるような工夫などと、様々な配慮が必要でした。

 なんとか及第点になったと思います。お客様も綺麗になったと喜び、安心されたようでした。さらにはチェストの内一つはご息女に譲ると聞き、想いがまた一段と受け継がれるのだなと嬉しく思いました。

 新たな虫喰いに対する方策の確立や、TVボードに使われた新たに作製した木製引き手など、こちらとしても大変勉強になり、貴重な経験をさせていただきました。いつもながらお客様には感謝しかありません。ありがとうございました。

【寸法】
北欧ビンテージ調チェスト H:800 W:1165 D:420
TVボード H:600 W:1165 D:420(mm)
【塗装】
オイルステイン着色、オイルワックス仕上げ