二つ重ねの時代箪笥を横並びにし、四つ脚をつけて低めのリビングボードとなりました。
今回の再生は基本的には復元の部類です。割れや傷を治して元と同じような風合いで仕上げます。しかし普通の復元と違う点は横並びができるようにするということです。二つ重ねでも置けるし、脚をつけて横並びにもできるという仕様です。
古い箪笥で直角が無くなっているにもかかわらず、どちらの用途も満たしつつ、横に並べた時は二つの隙間を綺麗に合わせなけらばならないという点が最も苦労しました。“言うは易し”ですが実現するのは容易ではありません。
塗装はカシュ―を使用しています。元の箪笥はおそらく漆が塗られていたと思うのですが、漆の扱いは慣れていないのでそれと同じような仕上げになるカシュ―を使いました。とは言ってもやはり別物なので同じような深みを出すには工夫が必要でした。幾度も下塗りと上塗りの組み合わせを試行錯誤してようやく及第点を得た気がします。塗装は奥が深いです。
さて、リビングボードとして再生されお客様宅にお届けしました。それが置かれた空間は、ぐっと引き締まったようでした。実際に生活空間に置かれ自然光に照らされた箪笥は、より一層深みが増したようでした。
お母さまの形見が生まれ変わって現代に蘇りました。お客様には大変喜んでいただけて嬉しい限りです。ありがとうございました!
【寸法】
W:1757 H:650 D:425(㎜)
【塗装】
カシュ―仕上げ