桐たんすに込められた想いを大切に

厨子とネームプレート

 三方桐の三つ重ねの箪笥から厨子とネームプレート、金具からペンダントを作成しました。

 元の箪笥は亡くなられたお母様の嫁入り道具でした。転勤や引越しなどで何度も移動を余儀なくされるもその都度一緒に運んで大事に使われていました。動かすことが多いとやはり箪笥には負担がかかり様々なところが割れたり離れたりしていました。お客様自身も共に過ごしてきて思い入れがあるため、形見として何か残せないかというご依頼でした。

 桐の部分だけを取り出し、厨子に改造しました。中にはお母様の名前の入ったネームプレートを額に入れて納めます。このネームプレートには引き戸の戸引き手周辺を利用しました。よく見て触れる箇所だったのでその名残として戸引き手を残して名入れをしたので左右一対あります。他にも親族で形見分けにと引き明け(鍵穴飾り)をペンダントにアレンジしました。元は引き明けだったとわかるようにスライドする機構をそのままにペンダントに加工しました。

 一周忌に間に合うように再生し、ご親族にもお披露目をされました。ご親戚からは再生したことに対し、よく気がついた、お母様も喜んでいるはずとお褒めいただいたお客様でした。後日ご丁寧にお手紙をいただきました。そこに書かれていたのは、「厨子を抱えて一周忌を迎えた時、まるで母を抱えているようで涙が出ました。」と。こちらも感極まってしまいました。自分の技術が役に立ってこんなにも喜んでいただけたことに本当に嬉しく思います。

 大切な人が亡くなるのはとっても切ないことですが、それを機にさらに絆が強まり想いが深まり、強くなれるように感じます。お客様だけに限らず、その機微に触れられた私自身も強く成長できたように感じます。ありがとうございました。
 
【寸法】厨子 W:270 H:390 D:190(mm)
【塗装】厨子:トノコ仕上げ