三つ重ねの総桐箪笥から、幅広で背の低いテレビ台を作製しました。
元の箪笥は加茂で作られた箪笥です。引出しの中には当時の加茂箪笥家具工業組合の証紙がありました。現在の組合の文献を見ると1939年(昭和14年)設立、1943年(昭和18年)解散となっていたので約80年前に作られたものと解りました。
その割には狂いが非常に少なく、残り渋の出も少ないです。これは木工技術の高さと材料管理の徹底の賜物で、当時の業界の繁栄度を伺い知ることができます。グレードとしてはこれが当時の普通なのかもしませんが、今から見ても相当の高級品だと思われます。
お客様のご所望は桐たんすをアレンジしたことが見て分かるテレビ台が欲しいということでした。最近よく見る桐たんすをただ平置きしてテレビを置いただけのアレンジでは作り手の私が満足しないと言う事をよく理解してくださったお客様には感謝しかありません。
酒井指物の最大の特徴と自負する横長に組み継ぐアレンジでロー&ワイドなテレビ台に仕上げました。当然使用環境に応じて高さも変更しています。さらに三ツ割引出しは高さが低いのでかさ増し分に隠し箱を付けました。
そんなサプライズも喜んでいただき、非常に気に入られた様子で安心しました。いつもながら課題を与えていただけるお客様には感謝しきりです。これに傲る事なくさらに研鑽していきたいと思います。ありがとうございました。
【寸法】
W:1545 H:365 D:430(mm)
【塗装】
オイルステイン着色、オイルワックス仕上げ