桐たんすに込められた想いを大切に

総桐チェストの製作

 総桐のチェストを2棹新調しました。

 お客様のご要望は、取手は金具ではなく彫り込み引き手、一棹は三つ割りにして引き明け(鍵)付き。塗装は普段使いに適した茶系でオイルフィニッシュ。あと、高さが90cmくらい。

 これ以外の仕様はお任せしますと言っていただきました。

 さらにお客様は、引き出しの割り方や、引き明けの種類、引き出しの杢など、細かい部分やデザインなど、基本的に職人さんにお任せした方が良いものができるから、と一任していただいたのです。

 「お任せします。」 よくお客様から言われる言葉ですが、これは本当に職人冥利につきる言葉です。
 もちろん必要最低限の仕様は教えていただかないと始まりませんが、あとはお任せしますとなると、その瞬間、さぁどうしてやろうかと高揚感を覚えます。使い勝手やインテリアとしてどうかなと想像したり、製作工程を想像し、図面を引きながらもう少しこうした方が良い、ああした方が良いと頭の中で試行錯誤を繰り返します。自分はこの過程が本当に好きで、ここが自分のものづくりの高揚感のピークと言っても過言ではないと思います。その後の実際の製作工程はあくまで作業。イメージを実現させるための作業でしかないのです。

 こうしてお任せされて、完成品を目したときのお客様の反応は何物にも変えられない褒美だと思います。苦労が報われる瞬間です。
 今後もお客様の期待や想像を超える仕事をしていきたいと思う製作となりました。
 
【寸法】 W:1060 H:900 D:470(mm)
【塗装】オイルステイン着色、オイルワックス仕上げ