三つ重ねの桐箪笥から仏壇に再生されました。
この箪笥が置かれていたのは築100年以上のお客様のご実家でした。諸事情により取り壊されることになったのですが、何か生家の思い出を残したいということでご依頼を頂きました。
お客様からは、このお母さまの箪笥を仏壇に再生してほしいというご希望があったのですが、丸ごと家屋が取り壊されてしまうのであれば何かもっと形見を残したいと思い、同じ部屋にあった仏間の扉の金具を再生された仏壇の金具に再利用することをご提案いたしました。
おそらく戦時中前後に作られたであろうこの箪笥は材が薄く、どうパーツ取りをするか、かなり悩みました。
ほとんどが杉板でしたが、削るときれいな肌が出てきます。香りもまだまだします。
桐箪笥のグレードとしては杉が使われていると下がってしまうのですが、再生の場合、削り直すと桐より杉のほうが美しい表情が出てくるので作業が進むにつれて本当に“再生”生き返って行くようです。
茶色くくすんでいた仏間の金具は所々緑青が吹いていたので綺麗に研磨して真鍮の地を出しました。金ぴかの華やかな金具になりました。それに合わせるように元の箪笥についていた取手も金色に塗装して小引出しの取手としました。
今回のこの仏壇は奥行きが深いので扉を開けると内部が暗いと思い、中に照明を取り付けました。電池式のLED照明を採用しました。綺麗な杉の表情が良く見えます。
塗装は材の表情や質感がそのまま生きる蜜蝋ワックスを塗りました。
扉表面や、側板の桐の柾目材だけは新材で補ったので見た目はもはや新品となってしまいましたが、お客様の「満足です!」という言葉に安心いたしました。喜んでいただけて良かったです。
同じく解体された生家の形見として再生されたTV台があります。良かったら併せてそちらもご覧になってみてください。→床板からTV台に再生
【寸法】W:495 H:742 D:371(mm)
【塗装】蜜蝋ワックス